【弁護士が解説】交通事故で歯を失った場合の後遺障害等級は?

代表弁護士 津田 岳宏 (つだ たかひろ)

交通事故で歯を失ってしまった場合や、咀嚼機能や言語機能に障害が生じてしまった場合、後遺障害等級の認定に従い慰謝料・逸失利益の補償が受けられます。

この記事では、交通事故で歯を失ってしまった場合や、咀嚼機能・言語機能に障害を負ってしまった場合の後遺障害等級などについて解説します。

交通事故で歯を失った場合、後遺障害に該当する?

交通事故で歯が折れたり抜けたりした場合、後遺障害等級表に従った後遺障害等級の認定を受けられることがあります。

どのような場合に後遺障害等級が認定されるのかについて見ていきましょう。

3本以上歯を失うと後遺障害に該当する

歯の喪失について後遺障害等級が認定されるのは、3本以上の歯が失われてしまった場合です(各歯につき、全体の4分の3以上が欠損していることが必要です)。

失われた歯の本数が多くなればなるほど、より重い後遺障害等級が認定されます。

一方、失われた歯の本数が2本以下の場合には、後遺障害等級が認定されないので、後遺障害慰謝料や逸失利益の補償を受けることはできません。

この場合、治療費や通院費など、通常の傷害としての補償が受けられるにとどまります。

歯を失った本数と対応する後遺障害等級一覧と慰謝料の目安

交通事故で歯を失った場合、その本数によって、以下の表に従った後遺障害等級が認められます。

なお、後遺障害慰謝料については、弁護士に依頼をすることにより、「弁護士基準」という被害者に有利な基準による保険金の支払いが受けられます。
以下の表では、弁護士基準による等級別の後遺障害慰謝料の金額についても紹介します。

後遺障害等級 後遺障害の内容 後遺障害慰謝料
10級 14歯以上に歯科補綴を加えた場合 550万円
11級 10歯以上に歯科補綴を加えた場合 420万円
12級 7歯以上に歯科補綴を加えた場合 290万円
13級 5歯以上に歯科補綴を加えた場合 180万円
14級 3歯以上に歯科補綴を加えた場合 110万円

歯の欠損(歯牙障害)と併発し得る後遺障害とは?

交通事故で口周りに大きな衝撃が加わった場合、歯の欠損(歯牙障害)と併せて、咀嚼機能や言語機能への障害が発生するケースがあります。

咀嚼機能の障害

咀嚼機能の障害とは、かみ合わせ・筋肉・関節などに不具合が出ることによって、食べ物をかみ砕く機能に障害が生じてしまうことをいいます。

咀嚼機能の障害は、障害の程度によって以下の3種類に分類されます。

  • ①咀嚼機能を廃したもの:流動食以外は摂取できない状態
  • ②咀嚼機能に著しい障害を残すもの:粥食やそれに準ずる飲食物以外は摂取できない状態
  • ③咀嚼機能に障害を残すもの:ある程度固形食は摂取できるものの、一定の固さ以上になると咀嚼できない状態

言語機能の障害

言語機能の障害とは、後遺障害等級の認定上は、「子音が発音できなくなること」をいいます。

子音には、

  • ①口唇音(ま・ぱ・ば・わ行音、ふ)
  • ②歯舌音(ざ・た・だ・な・ら・さ行音、しゅ、じゅ、し)
  • ③口蓋音(か・が・や行音、ぎゅ、にゅ、ひ、ん)
  • ④喉頭音(は行音)

の4種類があり、このうち何種類が発音不能かなどによって、障害の程度が以下の3種類に分類されます。

  • ①言語の機能を廃したもの:4種類中3種類以上の子音が発音不能な状態をいいます。
  • ②言語の機能に著しい障害を残すもの:4種類中2種類の子音が発音不能な状態

※子音の連結に問題があるため、言語のみでは意思疎通ができない状態も含む

  • ③言語の機能に障害を残すもの:4種類中1種類の子音が発音不能な状態

咀嚼機能・言語機能の後遺障害等級一覧と慰謝料の目安

咀嚼・言語機能の障害に関する症状別の後遺障害等級と、弁護士基準(※)による後遺障害慰謝料の目安を以下の表にまとめました。
(※)弁護士基準・・・慰謝料を計算する3つの基準のうち、もっとも高い金額で算定する基準

後遺障害等級 後遺障害の内容 後遺障害慰謝料
1級 咀嚼および言語の機能を廃したもの 2,800万円
3級 咀嚼または言語の機能を廃したもの 1,990万円
4級 咀嚼および言語の機能に著しい障害を残すもの 1,670万円
6級 咀嚼または言語の機能に著しい障害を残すもの 1,180万円
9級 咀嚼および言語の機能に障害を残すもの 690万円
10級 咀嚼または言語の機能に障害を残すもの 550万円

口の後遺障害について後遺障害逸失利益は認められる?

後遺障害等級が認定される場合、以下の表に記載された労働能力喪失率に従い、将来得られるはずだった収入についての機会損失分について、後遺障害逸失利益の補償が受けられます。

後遺障害等級 労働能力喪失率
1級 100/100
2級 100/100
3級 100/100
4級 92/100
5級 79/100
6級 67/100
7級 56/100
8級 45/100
9級 35/100
10級 27/100
11級 20/100
12級 14/100
13級 9/100
14級 5/100

ただし、口に関する後遺障害の場合は、必ずしも労働能力の喪失に直結しないと評価されず、後遺障害逸失利益全額の補償が受けられない可能性があるので注意が必要です。

歯牙障害・咀嚼機能の障害の場合はフルには認められない傾向にある

歯の欠損(歯牙障害)の場合、手術で義歯を埋め込むなどの方法により、身体機能の大部分を回復できます。

また、咀嚼機能障害の場合、流動食しか取れずに健康に重大な被害が生じる場合などを除けば、労働能力の喪失には直結するとは評価されにくい傾向にあります。

したがって、歯牙障害・咀嚼機能の障害の場合には、上記の表に従って計算される後遺障害逸失利益全額の補償は認められにくいでしょう。

言語機能の障害の場合は認められやすい

一方、言語機能の障害の場合は、仕事上でも大切な他者とのコミュニケーションに支障を来すことになるため、後遺障害逸失利益の補償が比較的認められやすいと考えられます。

まとめ

  • 交通事故で歯を失った場合、その本数によって、後遺障害等級が認定される場合があります。
  • 咀嚼機能や言語機能に障害が生じた場合にも、同様に後遺障害等級が認定されます。
  • 後遺障害等級が認定された場合、慰謝料と逸失利益の補償を受けられます。特に慰謝料については、弁護士に依頼すれば、被害者に有利な弁護士基準による補償を受けることが可能です。

口周りの後遺障害に関する保険金・損害賠償請求については、ぜひ弁護士にご相談ください。

代表弁護士 津田岳宏(つだたかひろ)/昭和54年生/京都女子大学付属小学校卒業/東大寺学園中・高等学校卒業/京都大学経済学部卒業/平成19年9月弁護士登録/平成26年6月京都グリーン法律事務所を設立

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