交通事故によるむちうちで後遺障害12級が認定される場合は?
交通事故に遭ってむちうち状態になった後、後遺障害に悩んでいらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
特に重い後遺障害に悩まされている場合には、加害者や保険会社から正当な補償をしてもらいたいですよね。
むちうちによる後遺障害は、「神経症状」と呼ばれる、外から見てわからない症状が中心です。重い神経症状が後遺障害として残っている場合には、最大で後遺障害12級が認定される可能性があります。
この記事では、
- むちうちによる後遺障害の内容
- 後遺障害慰謝料の金額
- 後遺障害12級が認定されるための要件
などについて弁護士が解説します。
むちうちで認定される後遺障害等級は?
交通事故でむちうちになった場合、その後治療を行ったとしても、むちうちの部位に痛みやしびれなどが残ってしまう場合があります。こうした症状は「神経症状」に当たるものとして、後遺障害の一種として認定される可能性があります。
むちうちで認定される後遺障害は、その症状の程度によって以下の2種類に分類されます。
12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」
むちうちによる神経症状の中でも重い部類の場合、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として、後遺障害12級13号が認定されます。
後遺障害12級13号に該当する神経症状は、残存している痛みやしびれの程度が重いことに加えて、他覚的所見が存在することが大きな特徴です。「他覚的所見が存在する」とは、患者自身の自覚症状だけでなく、何らかの客観的資料によって後遺障害の存在が裏付けられていることをいいます。
どのような方法によって後遺障害の存在が裏付けられるかについては、後で解説します。
14級9号「局部に神経症状を残すもの」
一方、神経症状が比較的軽い場合や、自覚症状以外に後遺障害を裏付ける客観的資料がない場合には、後遺障害14級9号が認定される可能性があります。
14級9号の認定の際に重要となるのは、主に患者の自覚症状と通院歴です。他覚的所見が存在しない14級9号の後遺障害の認定を受けるにあたっては、継続的に通院して医師の診察を受け、後遺障害がたしかに存在するという医師の意見を書いてもらうことが重要になります。
後遺障害12級と14級では後遺障害慰謝料の金額が大きく異なる
交通事故により後遺障害が残った場合、認定される後遺障害等級に応じて、加害者または加害者側の任意保険会社から「後遺障害慰謝料」の支払いを受けることができます。後遺障害12級と14級では、受け取れる後遺障害慰謝料の金額が大きく異なります。
そのため、どちらの等級が認定されるかは被害者にとって非常に重要です。
後遺障害慰謝料の金額は、弁護士に依頼をしている場合であれば、いわゆる「弁護士基準」と呼ばれる基準に従って算定されます。
弁護士基準によれば、後遺障害12級の後遺障害慰謝料は290万円、後遺障害14級の後遺障害慰謝料は110万円です。このように、12級と14級ではおよそ3倍近くの差があることがわかります。
なお、弁護士に依頼をせずに加害者側の任意保険会社と示談交渉をする場合、弁護士基準よりも低い金額の保険金を提示されることが多いので注意しましょう(任意保険基準)。
後遺障害12級が認定されるための要件は?
後遺障害12級は、神経障害で認定される後遺障害の中では重い部類に属し、後遺障害慰謝料の金額も手厚い分、認定されるための要件も厳しくなっています。
画像所見が必須
前述のとおり、神経障害で後遺障害12級の認定を受けるためには、他覚的所見の存在が必須です。後遺障害等級認定の運用上、他覚的所見を示す資料としては、CT・MRI・レントゲンなどの画像資料を用いることが要求されています。
そのため、むちうちによる神経障害で後遺障害12級を認定してもらうには、病院で画像検査を受け、その結果を後遺障害等級認定の申請時に自賠責保険会社へ提出する必要があります。
「頑固な神経症状」があるといえるかどうか
後遺障害12級13号は、「局部に頑固な神経症状を残すもの」について認められます。他覚的所見が認められる場合の多くは、むちうちとしては比較的重傷の部類となるため、「頑固な神経症状」の存在が認められやすいでしょう。
しかし、他覚的所見があるとしても、後遺障害の程度が軽い場合には、後遺障害14級が認定されるにとどまる可能性があります。
交通事故を原因として障害が発生したことの証明が必要
後遺障害慰謝料は、あくまでも交通事故を原因として後遺障害が発生した場合に支払いを受けることができる性質のものです。
したがって、後遺障害12級の認定を受けるには、まさに交通事故によって後遺障害が発生したのであり、別の原因ではないことを証明しなければなりません。
証明方法の一つとしては、交通事故により重度のむちうちが生じてもおかしくないほどの大きな衝撃を受けた事実をアピールすることが考えられます。
たとえば事故により車が大破した事実があれば、事故による衝撃が大きかったことを示す証拠になります。
また、事故直後に医師の診察を受け、その時点で重度のむちうち状態であったということについて、医師に意見として述べてもらうことも有効でしょう。
事故直後から継続的に医師の診察を受けていれば、交通事故以外の原因で後遺障害が発生した可能性がないことについても、治療の経過に関する医師の意見から証明できます。
まとめ
交通事故でむちうちになった場合、症状の重さなどによって、後遺障害12級または14級が認定される可能性があります。
- 後遺障害12級の後遺障害慰謝料は、後遺障害14級の場合よりも3倍近く高額になります。
- 後遺障害12級が認定されるには、画像資料による他覚的所見の存在などが要件となり、14級の場合よりも認定が厳しくなります。
交通事故によりむちうちになってしまった場合には、適切な後遺障害慰謝料の支払いを受けられるように、弁護士に相談をして後遺障害等級認定の申請準備を進めることをおすすめします。