死亡事故の逸失利益は、どのように計算するのか?

代表弁護士 津田 岳宏 (つだ たかひろ)

死亡事故の損害賠償は、治療費や交通費、休業損害等、被害者の死亡までの損害の請求と葬儀料、慰謝料、死亡による逸失利益等、被害者の死亡後に関する損害の請求があります。なかでも慰謝料や逸失利益は大きな損害額になります。しかし、被害者が死亡したからいって一律に、請求、支払いされるものではなく、慰謝料や逸失利益も加害者や相手保険会社へ証拠を提示し請求の根拠を示す必要があります。ここでは死亡の逸失利益とその計算方法を紹介します。

請求できる人

損害賠償の請求は、被害者本人や被害者から委任された代理人が行います。被害者本人が死亡した場合、被害者本人は請求できませんので、被害者の財産を相続する人すなわち相続人が請求します。相続人が1人の場合、すべての損害を請求し全額を受け取ることができます。相続人が複数いるとき、各相続人の法定相続分が請求した損害額を受け取れる範囲となります。

死亡事故による逸失利益とは

交通事故により被害者が死亡したため喪失した収入を、逸失利益といいます。収入の喪失は被害者の家族にとっては経済的な打撃となります。そこで、逸失利益として加害者に請求することができるのです。

逸失利益の計算

逸失利益は以下の式から算定します

死亡事故による逸失利益=基礎収入× (1 −生活費の控除率) ×稼動可能期間に対応するライプニッツ係数

基礎収入、生活の控除率、稼働可能期間という言葉を解説します。

(1)基礎収入額

基礎収入額とは、被害者が仕事によって得ていた収入のことです。サラリーマンや自営業者など収入の得方が異なると基礎収入も変わります。そこで職業ごとの基礎収入を説明します。

①給与所得者

サラリーマンや公務員の場合は在籍期間中の給与のほか歩合給や各種手当、ボーナスも収入に含めます。退職金については、定年の時に支払いを受ける退職金と死亡により受け取った退職金の差額が逸失利益となります。
給与所得者は、定年後収入が減少するのは明らかなので、定年後の収入は平均賃金を基礎とします。

②事業所得者

事業所得者とは自営業者をはじめ、開業医、税理士など自由業者、商工業者、農林漁業者、プロスポーツ選手など委任、請負、業務委託などの労働契約以外の契約で収入を得ている人のことです。所得税の確定申告を基礎とします。

なお、現実の所得がない人でも、逸失利益の請求ができます。主婦や年少者、高齢者の基礎収入は以下のように算出します。

③家事従事者

主婦など家族のために料理、洗濯、掃除等の家事労働を行う人を家事従事者といいます。家事従事者は家事による対価を得ていませんがはありませんが、基礎収入は女性の賃金センサスの平均賃金を基礎に算定します。

④年少者

年少者とは幼児・児童・生徒・学生のことです。将来仕事につき収入を得る予定として賃金センサスによる平均賃金を基礎に算定します。
大学卒の平均賃金を採用できるかが争いになった例があります。大学進学が間近で受験準備も進めていたと証明できれば大学卒の平均賃金が認められやすいのですが、小学生や中学生の段階で死亡した場合、大学進学を前提しない平均賃金を基礎収入としていました。しかし、大学進学率が上がった現在では、家庭状況を明らかにすれば大学卒の平均賃金が認められるようになりました。

⑤高齢者

高齢者が定年退職者であれば収入を得ていないとして、原則、逸失利益は否定されます。
年金収入については、争いがあります。
年金は社会保障として支給され、被害者の稼働能力とは関係しないとして逸失利益を否定する考え方もあります。しかし、国民年金や厚生年金、障害年金は受給者とその家族の生活保障を目的とし、年金の給付はその保険料の対価であり、裁判例では逸失利益として肯定しています(障害年金の加給部分については否定しています)。
ただし遺族年金について受給者である遺族本人だけの生活保障という目的であり、また受給者本人が保険料支払ったものでないことから、裁判例では逸失利益を否定されています。

(2)生活費の控除率

被害者本人が死亡すると生活費がかからなくなるので、逸失利益から生活費分を控除します。
控除率は家計の担い手であるか否か、性別によって定型的に定められています。

  1. 一家の支柱(家計の担い手)の場合 30から40%
  2. 女性(女児、独身、主婦を含む) 30から40%
  3. 男性(男児、独身を含む) 50%

死亡した人が扶養家族を多く抱えていた場合は、扶養家族のため逸失利益が多くなるよう30~40%と控除率に幅があります。

(3)稼働可能期間

死亡時の被害者の年齢から就労可能年数とされる67歳までを引き算し、その差を稼働可能期間としています。
なお、高齢者の場合は、67歳までの年数と簡易生命表の平均余命年数の2分の1を比較し、長いほうを稼働可能期間とします。

終わりに

死亡の逸失利益は被害者が請求できる権利ですが、その請求は証拠から導いた合理的妥当性があることを求められます。法律に詳しくない一般の方にとって「証拠から導いた合理的妥当性ってなに?」と思われるでしょうが、法律のプロである弁護士にお任せいただければ被害者の方にとって根拠のある逸失の利益の請求ができるのです。死亡の逸失利益の請求でお困りの方は当法律事務所へご相談ください。

代表弁護士 津田岳宏(つだたかひろ)/昭和54年生/京都女子大学付属小学校卒業/東大寺学園中・高等学校卒業/京都大学経済学部卒業/平成19年9月弁護士登録/平成26年6月京都グリーン法律事務所を設立

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