交通事故の被害者でも賠償義務がある?過失割合で決まる当事者の責任

代表弁護士 津田 岳宏 (つだ たかひろ)

「先日車の運転中に歩行者を轢いてしまい、交通事故の加害者になってしまった。しかし歩行者も信号無視しており、私が全面的に加害者になるのは納得いかない」

「赤信号で停止中に後方車から追突された。過失割合で揉めないために現場写真を撮りたいが、何か撮影のポイント等あるのだろうか」

交通事故の加害者になった場合は、その損害を賠償する義務が生じます。しかし横断歩道の青信号での歩行者を轢いた場合と、横断歩道の赤信号を無視した歩行者を轢いた場合で、加害者の責任が全く同じになってしまうのは、不公平と言わざるを得ません。

従って法律はそのような不公平を是正するため、被害者の過失の割合に応じて、加害者の責任を軽減させる制度として過失相殺(民法722条2項)というものを認めています。
つまり過失相殺により交通事故の被害者であっても、その過失の程度に応じて、交通事故の責任を負うことになります。

今回の記事では、そのような過失の割合に応じた損害賠償の責任について、詳しくご説明いたします。参考にして頂ければ幸いです。

過失割合により賠償額が決まる?過失割合の具体的な判断手順

前述したように過失相殺という制度があるため、当事者の過失の割合によって交通事故における責任の重さは変わってきます。責任の重さとは具体的に言うと、損害賠償の金額になります。
例えば自動車が歩行者を轢いてしまった交通事故の場合で、被害者が加害者に100万円の損害賠償を請求したとします。この場合、加害者と被害者の過失が100:0なら、その損害賠償請求は100万円全額認められる可能性があります。

一方で加害者の過失と被害者の過失が60:40であれば、その損害の40%の責任は被害者が背負うことになります。従って被害者の損害賠償請求も、40%減の60万円しか認められない可能性が出てきます。

従って過失の割合により損害賠償の請求額も大きく変わるため、当事者の過失の割合をどのように認定するのかは、非常に重要な判断となります。よってまず、その過失割合の具体的な判断の手順について検討していきます。

過失割合は誰が決めるのか

過失割合は、当事者間の話し合いや交渉により決定されます。交通事故が起きると警察が実況見分(現場検証)など行い、その際に当事者から事情を聴取することで過失割合も警察が判断すると思われがちですが、警察が過失割合を決めているわけではありません。

警察が関与できるのは、あくまで交通事故の刑事的側面であり、損害賠償などの民事的手続きにおいては関与できないことになっています。
また自動車同士の衝突などの典型的な交通事故では、双方が自動車保険に加入していることが通常であるため、保険会社同士での交渉が基本になります。

過失割合はどのように決定されるのか

過失割合は交通事故当時の具体的状況を基に、判例の判断基準に照らして判断されることが一般的といえます。交通事故の具体的状況とは、信号や標識を守っていたのか、優先車であったかなどの事情についてです。

また過失割合の判断基準は、判例の積み重ねによってかなり細かい状況まで対応できるようになっています。自動車同士の交通事故なら、それが交差点なのか、更に交差連での直進車同士なのか、右折車と直進車なのかといった細かい状況ごとに判例の基準というものが確立しています。

以上のことから交通事故が起きた場合は、現場の具体的状況と判例の基準に照らして、保険会社及び当事者が協議により過失割合を決定することになります。ただし保険会社及び当事者は法律のプロではありません。

いくら細かな状況ごとに対応した判例があるとはいえ、判例基準の当てはめミスや、現場状況の読み違えなどが起こる可能性は捨てきれません。従って保険会社の判断に納得いかない場合は、速やかに専門家である弁護士に依頼されることをお勧めします。

被害者が加害者より多く賠償金を支払うケースとは?

両当事者に過失があった場合、基本的には過失割合の少ない当事者の方が支払う損害賠償の金額も少なくなります。ただしケースによっては、過失割合の少ない被害者が、過失割合の多い当事者より多い損害賠償額を支払うことがあります。

軽自動車と高級車が衝突した場合

例えば国産の軽自動車を運転している当事者が、信号機のない交差点を直進しようとしているときに、対向車として走行していたフェラーリが強引に右折してきて、その結果衝突したとします。
この場合直進しようとした軽自動車が優先なので、軽自動車とフェラーリの過失割合は、20:80と判断されました。従ってこの点だけを考慮すると、軽自動車の賠償額の方が少なくなるように思われます。

しかし双方の車の損害を見積もったところ、軽自動車の損害額は10万円でフェラーリの損害額は300万円となりました。双方の車ともバンパーが少しへこんだ程度でしたが、いかんせん車の価格が違いすぎるため、その修理費用にどうしても高額な差がついてしまいます。

以上より双方の当事者の損害額を過失割合で算出すると、軽自動車の当事者の請求額は10万円×80%で8万円になります。一方でフェラーリの当事者の請求額は、300万円×20%で60万円となります。従って軽自動車の当事者の方が、少ない過失割合にもかかわらず、損害賠償の金額はフェラーリの当事者より52万円も多く支払うことになります。

一見すると不合理な結論であるように思われますが、論理的にこのようにせざるを得えない面もあります。車の運転者としては、任意の自動車保険に加入して自衛することが必要になります。

ドライブレコーダーに期待される証拠としての役割

ドライブレコーダーとは、運転中の映像を記録する機器のことをいいます。最近は安価なドライブレコーダーや、スマートフォンがドライブレコーダーになるアプリも登場し、ドライブレコーダーは運転者にとって身近なものになりつつあります。

過失割合を決める際、両当事者の意見が相違した場合に重要になるのが客観的な証拠です。ドライブレコーダーが記録した運転中の映像は、当時の状況を示す証拠として重要な役割を果たします。

信号無視について争いがある場合

ドライブレコーダーが意味を持つ具体的な場面としては、信号無視があったかどうかを争う場面です。両当事者が「信号機は青でした」と主張した場合、どちらかが誤った主張をしていることになります。しかし、目撃者など当時の状況を証言してくれる人がいない上、どちらが間違っているのかを追及するのは、非常に難しい判断になります。

しかしドライブレコーダーがあればその映像により、当時の信号機の色も確認することができます。従ってドライブレコーダーにより、どちらが信号無視したのか明らかにすることができます。それにより当事者の過失の程度が判明し、正当な過失割合の判断につながります。

携帯電話の使用が争われた場合

車の運転時に携帯電話を使用していた場合、それは過失があったと判断される重要な要素になります。しかし携帯の使用においても当事者が否定すれば、被害者としては携帯の使用による過失を主張することは難しくなります。

しかしドライブレコーダーがあれば、車の運転席の状況も記録していることがあるため、携帯の使用を裏付けられる可能性があります。従って携帯の使用による過失割合を争う場面でも、ドライブレコーダーは非常に大きな意味を持つことになります。

交通事故直後に撮影した現場写真の重要性。被害者自身が写真を撮る意味

ドライブレコーダーによる記録とは別に、被害者自身で事故現場を写真に収めておくことは非常に有効な処置です。交通事故が起こると、まず警察が実況見分を行います。
その実況見分の際に、警察は現場の写真撮影を行い、その写真は過失割合の判定においても参考にされます。従って被害者としても、写真撮影は警察に任せておけば十分と思われるかもしれません。

確かにほとんどの警察官は、事件や事故に対し適正に捜査を行ってくれます。しかし残念ながら、杜撰な捜査を行う警察官も一部存在します。交通事故において杜撰な実況見分が行われ、現場を正確に収めた写真がないということなれば、損をするのは被害者自身です。
杜撰な捜査が行われた際に泣き寝入りしないためにも、被害者自身で交通事故の現場を撮影しておくことが大切です。

現場写真を撮る際に押さえておくべきポイント

実際に交通事故の現場を写真撮影する際に、気を付けるべきポイントは

・加害者車両及び被害者車両を撮影していること
・近距離及び遠距離から撮影していること
・車両を様々な角度から撮影していること
・車両のナンバープレートが写っていること
・損傷部位が正確に撮影されていること

といった点になります。
いくら車の損傷部位が撮影されていても、それが加害者車両なのか被害者車両なのかわからなければ、証拠として意味がありません。従って写真撮影を行う際は、やみくもに撮影するのではなく、上記のポイントを考慮して撮影することが重要になります。

過失割合は修正される?加算要素・減算要素とは何か

過失割合の基本は、その交通事故の状況により定められています。自動車同士の事故で、交差点での直進者同士の事故なら、その過失割合は、○○:○○で、右折車と直進車なら○○:○○というように、類型化されています。ただし事故に至る事情などは、各交通事故により異なるため、事件ごとの事情を過失割合の判定に反映させる必要があります。

そのように個別の事情により過失割合を修正する場合において、過失割合を増やす要素を加算要素、過失割合を減らす要素を減算要素と言います。以下では過失割合の修正要素について解説します。

過失割合の修正要素の具体例

歩行者と自動車の交通事故を例とした場合、まず挙げられるのが「夜間」という修正要素です。夜間においては、自動車はヘッドライトの走行により歩行者から見てかなり目立つ存在になります。一方で自動車から見た歩行者は、昼間に比べてその目視が難しくなります。

従って歩行者から自動車を避ける方が容易という状況から、夜間の事故は歩行者の過失が加算されることになります。ただしこれは、自動車がヘッドライトを点けていたことが前提になります。自動車がヘッドライトを点けていなかったという状況下では、当てはまりません。

また歩行者が「児童や高齢者」といった事情も、代表的な過失割合の修正要素です。児童や高齢者は、成人と比べてその判断能力や運動能力が劣っていることが多いとされています。従って児童等の周辺を自動車が走行する場合、自動車側が児童等の挙動に注意する必要があります。
このようなことから、自動車と児童等の歩行者が交通事故を起こした場合、歩行者側の過失が減算されることになります。

過失割合の修正要素は以上に挙げたものだけではなく、自動車対自動車、バイク対自動車など、その類型によって様々な修正要素が存在します。過失割合の修正要素の有無は、損害賠償額にも影響するため、その判断は極めて重要です。保険会社の過失割合に納得いかない場合は、その修正要素の有無を調べるためにも、弁護士にご相談されることをお勧めします。

過失割合でお困りなら当事務所にご相談ください

解説は以上になりますが、いかがでしたか。過失割合の判断は専門的な知識を要するものが多く、素人が適切な判断をするのは中々難しいものがあります。保険会社に過失割合の判断を任せることもできますが、保険会社が常に正しい判断をしてくれるとは限りません。

損害賠償額に直接影響する過失割合の判断を、法律のプロではない保険会社に一任するのは、リスクがある行為になります。従って過失割合の判断という法的に意味のある行為は、弁護士に依頼するのがベストです。

当事務所では、賠償金を増額できなければ報酬を一切頂かないという方針のもと、ご依頼を承っております。相談料及び着手金ともに無料とさせていただいております。土日祝日ともに対応させていただいており、事前のご予約も不要です。
損害賠償請求における過失割合の判断に関し、豊富な実績を誇る弁護士を多数そろえております。交通事故における過失割合の判断についてご不明な点がある場合は、当事務所の弁護士に是非ご相談ください。

代表弁護士 津田岳宏(つだたかひろ)/昭和54年生/京都女子大学付属小学校卒業/東大寺学園中・高等学校卒業/京都大学経済学部卒業/平成19年9月弁護士登録/平成26年6月京都グリーン法律事務所を設立

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