被害者に代わる「成年後見人」の基礎知識

代表弁護士 津田 岳宏 (つだ たかひろ)

被害者の方が交通事故によって一命をとりとめたものの、植物状態になってしまったなど正常な判断ができない、意思表示ができなくなってしまった場合、損害賠償請求はだれがすればよいのでしょうか?
被害者が未成年者であるなら、親が法定代理人として加害者側と示談交渉をできます。被害者本人が成年の場合、成年後見人を選任する必要があります。ここでは、成年後見人について解説いたします。

成年後見制度とは

成年者である被害者本人が精神上の障害により正常な判断をできない状態のとき、被害者本人の財産を管理する成年後見人が必要とされています。
被害者本人が精神上の障害により正常な判断能力をできない状態とは、加害者や保険会社に損害賠償請求する意思を示せず、損害賠償について判断をする能力が失われた状態のことです。
被害者本人が意思を欠き正常な判断能力がないと、損害賠償請求の機会を逃したり、適正な賠償金を受け取れなかったりなどの財産上の損害を被るおそれがあります。
そこで、被害者本人の自己決定意思の尊重と財産保護との調和のため制度が設けられました。

成年後見人が必要となるとき成年後見人が必要になる主な後遺障害

成年後見人が必要となる正常な判断をできない精神上の障害となる例として、脳損傷による遷延性意識障害、重度の高次脳機能障害、介護を要する重度の脊髄損傷などがあります。ほかにも交通事故外傷と合併症、併発症により正常な判断をできない精神上の障害になることもあります。

(1)遷延性意識障害

遷延性意識障害とは、人が植物状態になったことです。植物状態とは日本脳神経外科学会が①自力で移動不可能②自力で食事が不可能③大便尿失禁状態④声を出せてもしても人に通じる意味あることを言えない⑤簡単な命令には従うがそれ以上の意思疎通は不可能⑥眼球は動くが見たものを認識していないという状態が3か月以上続いている障害です。

「声を出せてもしても人に通じる意味あることを言えない」「簡単な命令には従うが、それ以上の意思疎通は不可能」ということは、他人に自分の意思を伝えたり、物事を判断したりすることができないことです。だから被害者本人が自ら加害者への交通事故の損害賠償を請求することができないので、成年後見人が必要となるのです。

(2)高次脳機能障害

高次脳機能障害とは、自動車事故などで脳の器質が損傷され、一定期間以上意識障害があり、CTやMRIでの画像診断で急性期の所見があり、慢性期には脳室拡大と脳の萎縮が見られ、認知障害とともに人格障害が発症し、仕事や日常生活に支障をきたす障害です。
記憶・記銘力障害、判断力・集中力低下、遂行機能障害などの認知障害や意識障害があり、後遺障害等級別表第一の1級や2級に該当する介護を要する状態であるため、被害者が自ら加害者への交通事故の損害賠償を請求することは困難であるので、成年後見人が必要となります。

(3)脊髄損傷

脊髄損傷とは、車両の衝突などの高エネルギーが体に加わったことで、中枢神経のある脊髄を損傷すること傷病です。重度の脊髄損傷となると運動機能、感覚機能が失われ、体温調節、排便なども困難となり、常に介護が必要な状態になります。そのため被害者が自ら加害者への交通事故の損害賠償を請求することは困難なので、成年後見人が必要となります。

誰が成年後見人になるのか

成年後見人に就任できる人については特に決まりはありませんが、近親者の人が選ばれている例が多いようです。成年後見人を選任する家庭裁判所が本人と一定の身分関係があり、本人の利益を図れる行為を期待できるのは近親者だからとみなしているからでしょう。
なお、成年後見人は複数人が就任することもできるので、近親者のほか財産管理の専門家である弁護士を後見人とすることができます。
なお、後見人の就任期間の定めはありません。後見人を辞めるときは、本人が死亡した場合や後見が取り消された場合、家庭裁判所によって後見人解任された場合です。

成年後見人の役割

成年後見人は、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、生活、療養看護、財産の管理を行います。交通事故の示談交渉の本人に代わって進めたり、交渉を弁護士に委任したりすることもできます。

成年後見の申立手続について

本人の住民票上の住所のある管轄の家庭裁判所に成年後見人選任を申立てます。
申立の際、申立書、被後見人本人の戸籍謄本、住民票、登記事項証明書、成年後見人候補者の戸籍謄本、申立事情説明書、後見人等候補者事情説明書などの資料を添付します。

当事務所は成年後見人申立のサポートを行っております

当事務所では、事故後生活をはじめさまざまなストレスを抱えている被害者やご家族の方の負担を少しでも軽減できるよう、成年後見申立についてサポートさせていただいております。
ご相談いただければ、申立に必要な書類の収集・作成方法から加害者側との示談交渉までご家族の精神的・経済的負担を早期に軽減できる見通しを示すことができます。
当事務所の初回相談は無料です。成年後見についてお考えなら、一度ご相談ください。

代表弁護士 津田岳宏(つだたかひろ)/昭和54年生/京都女子大学付属小学校卒業/東大寺学園中・高等学校卒業/京都大学経済学部卒業/平成19年9月弁護士登録/平成26年6月京都グリーン法律事務所を設立

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