後遺障害の逸失利益はどのように計算するのか?

代表弁護士 津田 岳宏 (つだ たかひろ)

交通事故によって起こった怪我が完治せず、体に症状が残ると怪我をしていないときと同じ動作ができなくなります。日常生活や仕事をする上での障害となり、後々の生活や収入に大きな影響を与えます。このような場合、被害者は加害者に対し逸失利益を請求できます。ここでは逸失利益について詳しく解説します。

後遺障害の逸失利益

交通事故による怪我の症状が残ってしまった結果、事故以前までと同じように働けなくなり、喪失した収入を逸失利益といいます。被害者は転職や職種の変更が必要となったり、将来にわたって収入が減ったりと被害者にとって経済的な打撃を受けます。そこで、被害者はこの損失を逸失利益として加害者に請求することができるのです。

逸失利益の算定

後遺障害による逸失利益の算出には次の計算式を用います。

後遺障害逸失利益=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

基礎収入、労働能力喪失率、労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数という言葉を解説します。

(1)基礎収入額

基礎収入額とは、被害者が仕事によって得ていた収入のことで、事故前の収入を基礎に計算します。サラリーマンや自営業者など収入の得方が異なると基礎収入も変わります。そこで職業ごとの基礎収入を説明します。

①給与所得者

サラリーマンや公務員の場合、給与のほか手当やボーナスも収入に含めます。

②事業所得者

事業所得者とは自営業者をはじめ、開業医、税理士など自由業者、商工業者、農林漁業者、プロスポーツ選手など委任、請負、業務委託などの労働契約以外の契約で収入を得ている人のことです。所得税の確定申告を基礎とします。

なお、現実の所得がない人でも、逸失利益の請求ができます。主婦や年少者、高齢者の基礎収入は以下のように算出します。

③家事従事者

主婦など家族のために料理、洗濯、掃除等の家事労働を行う人を家事従事者といいます。家事従事者は家事による対価を得ていませんがはありませんが、基礎収入は女性の賃金センサスの平均賃金を基礎に算定します。

④年少者

年少者とは幼児・児童・生徒・学生のことです。将来仕事につき収入を得る予定として賃金センサスによる平均賃金を基礎に算定します。

⑤高齢者

高齢者が定年退職者のように将来仕事をして収入を得る予定がない場合、逸失利益は否定されます。
しかし高齢者の健康状態や資格・技能の有無、就職の意思、年金の受給状況その他不労所得の有無・金額、生活費等、今後就職する機会が得られる高度の蓋然性から、就労の機会があると認められれば逸失利益が肯定されることになります。

(2)労働能力喪失率

労働能力喪失率とは、後遺障害により労働能力の低下した割合のことです。
自賠責保険や労災保険では、後遺障害として残存症状を14の等級に分けております。その等級ごとに喪失率が定められており、該当する等級の喪失率を算定式にあてはめます。

(3)労働能力喪失期間

労働能力喪失期間とは、症状固定時の被害者の年齢から就労可能年限とされる67歳までの期間としています。
ただし、一律に67歳までとされるわけではなく、被害者の後遺症の部位・程度、年齢・仕事の内容等の具体的な状況によって喪失期間を限定することがあります。
高齢者の症状固定時の年齢から平均余命の2分の1を労働能力喪失期間の目安にします。

(4)労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数とは、就労可能年数までの期間の逸失利益から中間利息を控除するものです。中間利息を控除することよって、将来の金銭価値で評価された逸失利益を現在の金銭的価値に直します。ライプニッツ係数は労働能力喪失期間ごとに喪失率が定められています。

逸失利益の問題点

逸失利益について、裁判所は後遺障害がなければ得られたであろう収入と後遺障害を残した状態で得られたまたは得られると思われる収入との差額であるという立場をとっています。

したがって、後遺障害があっても収入の減少がない場合や事故前以上の収入を得ている場合は逸失利益が認められません。
例えば給与所得者のうち公務員のように勤務先が安定し手厚い待遇のある職場環境では、事故前後の収入差は将来にわたってもないものと考えられ、逸失利益を否定されます。

一方、サラリーマンの場合であって、現在後遺障害による収入の減少がなくても、事業規模や業務内容、取り巻く経済的な環境等による人員整理や倒産等の可能性がある、昇進の遅れや降格、退職の可能性が高い、職場条件・環境などへの配慮が打ち切られる可能性がある、本人の努力によって収入減少を食い止めている等の事情など将来に収入減少が予想される場合、逸失利益が認められることになります。つまり、逸失利益を算定する際、将来の状況も考慮する必要があるのです。

おわりに

後遺障害の逸失利益の請求については被害者が証拠を提出しますが、証明する内容は基礎収入など現在把握できることだけでなく、近未来ことまで詳細な立証が必要となります。こうした主張や証明を法律のプロである弁護士にお任せいただければ被害者の方にとって満足いただける逸失利益の請求ができます。後遺障害の逸失利益の請求でお困りの方は当事務所へご相談ください。

代表弁護士 津田岳宏(つだたかひろ)/昭和54年生/京都女子大学付属小学校卒業/東大寺学園中・高等学校卒業/京都大学経済学部卒業/平成19年9月弁護士登録/平成26年6月京都グリーン法律事務所を設立

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