もらえる慰謝料はどれくらい?もし交通事故で死亡してしまったら
「交通事故で息子が亡くなってしまった。悲しみは癒えることはないが、慰謝料の支払いで誠意を見せてほしい」
「交通事故で母を失った。加害者は反省しているし、家族も立ち直りつつあるが、慰謝料の支払いはきっちりやって欲しい」
交通事故は軽微なものでもショッキングなものですし、体の傷が癒えたとしても心の傷は中々癒えないものです。
そんな中、大切な家族が不幸にもこの世を去ってしまった場合、心の傷がどの程度なのかは想像を絶します。
心の傷は、慰謝料という賠償金で解決できる問題ではないかもしれません。しかし金銭の支払いでしか相手の誠意は確認できませんし、賠償金の完済が一つの区切りになることも確かです。
今回は交通事故で被害者が死亡してしまった場合、その慰謝料の支払いがどのようになるのか解説してみました。参考にしていただければ幸いです。
交通事故での示談手続き~被害者即死の場合~
交通事故が起きた場合、一般的な示談の流れは、まず被害者の怪我を治療し症状の固定により、後遺障害の等級が確定してから行うものとされています。しかしそれは被害者が生存している場合であり、即死した場合は治療や症状の固定などは問題になりません。従って事故後に具体的な手続きを踏むことなく、いきなり示談交渉に入ります。
示談の時期に関しても、事故の直後に行っても問題はないですが、被害者の葬儀や遺族の心の整理の時間などもあり、一定時間をおいてから行われるのが一般的です。その具体的な一定時間については49日の法要を目安として、示談の手続きに入ることが多いとされています。
葬儀費用の請求額はいくらまで?慰謝料とは別請求
交通事故にあった場合、身体的に損害が発生する一方、心も傷つきショックを受けることで、精神的にも損害が生じます。そのような精神的損害に対し、損害賠償を求めることを慰謝料請求といいます(民法710条)。
また慰謝料とは別に、被害者の葬儀のために費やした葬儀費用についても、賠償を請求することができます。加害者との交通事故によって被害者が死亡し、葬儀費用はそれにより発生した費用であり損害なので、請求できるのは当然といえます。
具体的に金額については、どの基準によるかで変わってきます。まず自賠責保険の基準(※)によれば、100万円とされています。
※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した事故については、新基準が適用されます。令和2年4月1日以前に発生した事故については、葬儀関係費は原則60万円。資料により60万円を超えることが明らかな場合は、上限100万円まで申請が可能です。
また弁護士に依頼した場合における弁護士基準によると、150万円程度までの請求が可能になります。
妻や子供?そして孫も?死亡した被害者の損害賠償請求権の相続
被害者が交通事故により被害を受けた場合、当然ですが被害者本人が加害者に対して、損害賠償請求を行うことになります。ですが被害者が死亡した場合は、この世にいない以上本人が請求することはできません。
ではこういった場合は、請求できずに終わってしまうのかと思われるかもしれませんが、そうではなく、法定相続人が損害賠償請求を行うことになります。なぜなら被害者の損害賠償請求権は、相続されることが判例により認められているからです。
ではその法定相続人とは、具体的に誰のことなのかについて説明したいと思います。ただし法定相続人全員が同時に相続するのではなく、相続における順位があるので、その順位ごとに説明します。
まず被害者に配偶者と子供がいた場合は、その両者が第一順位で相続人になります(民法887条1項、890条)。
次にその相続人の子供が、被害者の死亡時にすでに亡くなっている等といった事情があるときは、その子供の子供である被害者の孫が、第二順位の相続人になります(民法887条2項)。
更に子供も孫も被害者の死亡時に亡くなっていた場合等は、その孫の子供であるひ孫が、第三順位の相続人になります(民法887条3項)。
慰謝料請求は被害者以外でもできる?遺族固有の慰謝料請求
被害者が交通事故により被害を受けた場合、被害者本人が慰謝料請求できるのは当然ですが、それとは別に、遺族固有の慰謝料請求というものも存在します。以下では被害者の慰謝料請求及び遺族である近親者の慰謝料請求について、それぞれ解説します。
被害者本人が請求できる慰謝料の種類
被害者本人が請求できる慰謝料の種類は、一つではありません。その種類は、①入通院慰謝料、②後遺障害慰謝料、③死亡慰謝料の三つに分けられます。以下では三つの慰謝料の内容について説明していきます。
①入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、治療のために通院や入院した場合に請求できる慰謝料のことです。あくまで病院で治療したことが条件となるため、怪我を放置して病院に行かなかった場合や、即死した場合については請求できません。
具体的な金額については、自賠責基準(※)では一日あたり4300円で計算されます。
※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した入院慰謝料については、新基準が適用されます。令和2年4月1日以前に発生した入院慰謝料については、1日につき4200円です。
一方弁護士基準では、一か月入院してそれで完治した(通院しなかった)ケースでは、その額は原則53万円になります。
②後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、交通事故により後遺障害が認定された場合に請求できる慰謝料のことです。後遺障害とは、治療したにもかかわらず将来的に完治が望めず、それにより労働能力の低下または喪失した症状のことをいいます。
後遺障害はその症状により様々な等級に分けられており、どの等級に該当するかで請求できる金額も変わってきます。
ちなみに一番低い等級である14級では、自賠責基準では32万円となっています。これに対し弁護士基準では110万円とされています。
③死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、被害者が死亡したときに請求できる慰謝料のことです。被害者が死亡したことにより発生する慰謝料請求なので、当然被害者自身は請求できません。従って死亡慰謝料については、相続人が常に請求することになります。
その具体的な金額についてですが、自賠責基準(※)では一律400万円とされており、弁護士基準では亡くなった方の立場次第で、その額が大きく変動します。
※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した死亡事故については、新基準が適用されます。令和2年4月1日以前に発生した死亡事故については、死亡した本人の慰謝料は350万円です。
ちなみに一家の経済的支柱であれば、2800万円から3600万円ほどになります。
お分かりの通り、死亡慰謝料における自賠責基準と弁護士基準には、何千万という差があります。入通院慰謝料や後遺障害慰謝料でも差はありましたが、それとは比べ物になりません。従って死亡慰謝料を請求される場合は、弁護士に依頼することを強くお薦めします。
近親者の慰謝料請求
被害者が死亡したときは、被害者の近親者(遺族)も慰謝料請求することができます(民法711条)。近親者とは、被害者の父母、配偶者、及びその子供です。
その具体的な額については、自賠責基準では請求者一人につき550万円とされています。そして請求者が二人以上になると、100万円ずつ上乗せされていきます(二人なら650万円、三人なら750万円)。
また被害者に被扶養者がいる場合は、さらに200万円加算されます。
未来の収入も請求可能?死亡しなかったら得られた将来の収入請求
交通事故により怪我をして病院で治療した場合は、その治療費を加害者に損害賠償請求することができます。また怪我により働けなくなった場合は、怪我がなければ得られたであろう収入分も、損害賠償として請求することができます。その得られたであろう利益を、逸失利益といいます。
そして交通事故により被害者が死亡した場合も、逸失利益の損害賠償請求は可能です。ただし被害者本人がいない以上、その請求は相続人が行います。
逸失利益の具体的な額については、被害者の生前の給料をベースにして算出されるため、その額は人によって異なります。
まだ就労していない子供の逸失利益については、平均賃金を基にした収入額からその額が計算されることになります。
死亡事故による慰謝料なら当事務所にご相談ください
解説は以上になりますが、いかがでしたか。交通事故で身近な人を失うなんて、考えたくもないことです。しかし車社会である以上、交通事故のリスクは誰もが隣り合わせです。
もし大切な人を交通事故で失ってしまったら、加害者に対し、故人に見合った賠償金を全額支払わせることが、残された人間の使命なのかもしれません。
当弁護士事務所では、弁護士費用は完全後払いで、初回相談料(60分)は無料となっております。
また県内全域対応のため、県内であればどちらにお住まいであろうとも、対応させていただきます。
増額請求のノウハウを備えた弁護士も多数所属しております。交通事故における損害賠償請求につきましては、当事務所の弁護士に是非お任せください。