無保険車との事故に遭った場合の対応
交通事故の相手は選べません。「事故に遭っても保険に入っているから大丈夫だろう」と考える方もいらっしゃると思いますが、事故の相手が実は保険加入していなかったということがあるのです。
損害保険料率算出機構「自動車保険の概況 2017年度版(2018年4月発行)」によると、対人賠償保険(対人賠償共済)は全ドライバーの約9割が加入しています。しかし、残りの1割は任意保険や自賠責保険にも入っていないのです。経済的な困窮などから任意保険にも加入できない相手から十分な損害賠償が受けられることは非常に困難なことです。
無保険車との事故で被害者となったら損害賠償をあきらめないといけないのでしょうか。
いいえ、そんなことはありません。
ここでは、事故の相手が無保険だった場合の補償を受け取る方法を説明します。
事故の相手へ損害賠償請求できるもの
交通事故被害に遭った場合、事故の相手へ損害賠償請求できるものは、人的損害として怪我の治療費、休業損害、慰謝料などがあり、物的損害として車両の修理代、車載品の損害などがあります。
これらの請求は、相手が任意自動車保険(または自動車共済)に加入していれば、人的損害は自賠責保険、対人賠償保険から、物的損害は対物賠償保険から補償を受けられます。
しかし、相手が任意自動車保険に加入していなければ、人的損害は相手方の契約する自賠責保険へ、物的損害に関しては相手へ直接請求することになります。
また、相手が自賠責保険にも加入していなければ、人的損害も物的損害も相手へ直接請求することになります。
相手が任意保険に未加入の場合の対応
怪我などの人的損害が発生したときは、相手の自賠責保険に治療費、入院雑費、付添看護費、交通費(通院費)、診断書などの文書代、松葉杖コルセットなどの装具・器具費、休業損害、傷害・死亡・後遺障害などの慰謝料を請求します。
この請求額が自賠責保険の「120万円」という上限を超えた場合、通常、任意保険会社に請求するのですが、相手が任意保険未加入なると120万円を超えた分は直接相手に請求することになります。
なお、自賠責保険は怪我などの「人的損害」が対象です。車の修理費などの物的損害は対象外なので直接相手へ請求します。
しかし、相手へ直接請求しても、相手は保険に加入できないくらい経済的に困窮しているのですから損害の補償を受けられる可能性は低いでしょう。
そこで自分の加入している任意保険を活用する方法があります。
任意保険の活用
(1)人的損害を補償する保険
怪我の治療費などの人的損害は、加入する任意保険の「人身傷害保険」と「無保険車傷害保険」が付保されてあれば、補償を受けることができます。
人身傷害保険
人身傷害保険とは、交通事故で受傷をした場合、事故相手、状況や過失割合に関係なく保険金が支払われます。事故車両に同乗していた場合であっても請求できます。補償内容によっては歩行中や自転車での事故にも適用されることもあります。なお、人身傷害保険は「家族が加入する任意保険」でも適用されることがあります。
無保険車傷害保険
無保険車傷害保険とは、保険未加入事故相手が賠償金を払えず、被害者が死亡または後遺障害を被った場合で、加害者から十分な補償を受けられないときに、保険金が支払われます。
(2)物的損害への対応~車両保険の活用
車両保険、事故などによる自分の車の修理費等を補償する保険です。車両本体の金額だけでなく買い替えの際に負担する費用をも補償されるものもあります。
労災保険の利用
交通事故が仕事や通勤途中だった場合、労働者災害補償保険(労災保険)の利用もできます。
労災保険とは労働者が仕事中や通勤途中に怪我や死亡したときに保障が受けられる公的扶助の保険制度です。被害者自身の過失や事故の相手の状況に関係なく仕事や通勤途中であれば利用できます。
労災保険からは、療養補償(治療費)、休業補償、傷病補償年金、障害補償(後遺障害)などの
給付が受けられ、人的損害が補填できます。
相手が自賠責保険にも未加入の場合
事故の相手が自賠責保険には加入していない場合で、どこからも治療費などの損害を補償してもらえないときには、政府保障事業(ひき逃げ・無保険事故の被害者の救済)制度があります。
政府保障事業は、自動車損害賠償保障法に基づき、自賠責保険(共済)の対象とならない「ひき逃げ事故」や「無保険(共済)事故」の被害者に対し、健康保険や労災保険等の他の社会保険の給付(他法令給付)や本来の損害賠償責任者の支払によっても、なお被害者に損害が残る場合に、最終的な救済措置として、法定限度額の範囲内で、政府がその損害をてん補する制度です。
法定の限度額はおよそ自賠責保険の限度額と同額です。
示談交渉は弁護士にお任せください
被害者が直接加害者と交渉しても満足な損害賠償を受けられることはほとんどありません。弁護士なら、すべての交渉・手続きをしますので、被害者の方は治療に専念することができ、精神的な負担もほとんどありません。また交通事故専門の弁護士ですから、相手が保険に加入していなくても、損害を補填する制度も熟知しています。
事故相手が任意保険未加入の場合、すぐに当法律事務所へご相談ください。