死亡事故と慰謝料相場|高齢者と子どもの場合
死亡事故などの重大な事故の解決には必ず弁護士に依頼することをおすすめします。その理由は、弁護士が入ることで損害賠償額が大幅に増額するからです。例えば、示談交渉に弁護士を介入させない場合と、弁護士が示談交渉に介入した場合では、弁護士が介入しなかった場合では保険会社より支払われる賠償金額が場合によっては1000万円も低くなることがあるのです。このような賠償金額に差がつくのは、交通事故で亡くなられた方が高齢者や子どもの場合でも同様です。
慰謝料の基準を説明し、次に高齢者や子どもの死亡事故での慰謝料相場を説明します。
慰謝料とは
慰謝料とは、交通事故での死亡や怪我をしたことによる精神的・肉体的苦痛に対する損害賠償金のことです。したがって、慰謝料は被害者本人のみに支払われるものですが、被害者本人が死亡した場合や死亡に近い重篤な怪我をした場合、被害者本人分の慰謝料と一緒に、被害者本人の父・母、配偶者、子などの近親者も、その固有の慰謝料が請求できます。
死亡事故による慰謝料相場
交通事故の慰謝料は、迅速にかつ公平に解決が図れるよう基準化されています。その基準は、
自賠責保険基準、任意保険基準、裁判基準という3つの基準があります。被害者本人の死亡による慰謝料は、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判基準でそれぞれ基準化されています。
(1)自賠責保険基準
自賠責保険(※)での基準では、被害者本人の死亡慰謝料は一律400万円です。
※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した死亡事故については、新基準が適用されます。令和2年4月1日以前に発生した死亡事故については、死亡した本人の慰謝料は350万円です。
高齢者や子どもという年齢による差はありません。死亡した被害者本人に近親者がいる場合、近親者の数が増えるごとに被害者本人の慰謝料に加算されていきます。
なお、自賠責保険から支払われる保険金は死亡事故の場合は、最大で3000万円という上限があります。慰謝料もこの3000万円の限度内から支払われますが、他の支払い項目との合算で
限度額の3000万円を超えるときは、加害者が加入する任意保険から3000万円を超えた部分が支払われます。
自賠責保険基準による死亡慰謝料
被害者本人の慰謝料 | 近親者(父母、配偶者、子) | |
一律400万円 | 1人につき | 本人分に550万円を加算 |
2人につき | 本人分に650万円を加算 | |
3人以上 | 本人分に750万円を加算 |
他:被害者の被扶養者がいた場合、200万円を加算
自賠責保険では、被害者本人の死亡慰謝料は900万円~1300万円となります。
(2)任意保険基準
被害者への支払い金額が自賠責保険の上限3000万円を超えた場合、事故の加害者が加入する任意の自動車保険より、自賠責保険の限度額を超えた部分について賠償額が支払われます。現在では任意保険基準は保険会社ごとに異なっており、具体的な基準は公開されていません。
(3)裁判基準
裁判基準とは、過去の裁判例を弁護士会がまとめた基準です。
公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部発行『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(赤い本)に、下記図のようにまとめられています。
慰謝料額 | |
一家の支柱 | 2800万円 |
母親、配偶者 | 2500万円 |
その他 | 2000~2500万円 |
「一家の支柱」とは、家族(世帯)の生計を支えている収入がある人。
こちらの基準でも、高齢者や子どもという年齢による死亡慰謝料は設定されていません。
高齢者や未成年者という年齢で慰謝料が変わるのか
自賠責基準においても赤い本の裁判基準においても、高齢者、未成年者という年齢により被害者本人の死亡慰謝料額の差を設けていません。
しかし、死亡した被害者が子どもだった場合、その両親の子どもの成長に対する楽しみや生きがいが奪い、両親の苦しみは計り知れないものです。また死亡した被害者が高齢者であっても、家庭内での役割まで年齢をもって引退していると限りません。子どもであっても高齢者であっても、不本意に交通事故で命を奪われることは耐えがたい苦痛である以上、裁判では個々の事情を加味して慰謝料が決められています。
過去に慰謝料が加味された例を図表で紹介します。
(1) 子供の慰謝料
性別・年齢 | 本人分慰謝料額 | 近親者の固有の慰謝料 |
男児6歳・9歳 | 各2400万円 | 父母各200万円 |
女児5歳 | 2400万円 | 父母各300万円、弟100万円 |
男児8歳 | 2300万円 | 父母各300万円、兄100万円 |
女児3歳 | 2200万円 | 父母各300万円 |
(2)高齢者の慰謝料
性別・年齢 | 職業 | 本人分慰謝料 | 近親者の固有の慰謝料 |
女性・83歳 | 主婦 | 2400万円 | |
男性83歳 | 年金生活者 | 2400万円 | |
女性76歳 | 2200万円 | 子各100万円 | |
女性91歳 | 年金生活者 | 2200万円 | |
女性75歳 | 主婦 | 2500万円 | 夫100万円・子各2人孫1人各50万円 |
おわりに
冒頭に、『死亡事故などの重大な事故の解決には必ず弁護士に依頼することで、損害賠償金と受け取れる金額が大幅に増額する』と紹介しました。弁護士に依頼するメリットは他にも、保険会社担当者とのやりとりからから解放され、遺族の心理的負担が軽くなるということもあります。さらに、加害者へ大切な家族を失った精神的な苦しみを伝えられる刑事裁判へ被害者参加制度や心情等の意見陳述制度の利用のサポートを受けられるのも専門家である弁護士に委任するメリットのひとつです。
当事務所の初回相談は無料です。また弁護士費用特約に加入していれば、ご依頼をいただいても決して被害者の方が損をするようなことはありません。
お子様や高齢のご家族が交通事故で亡くなり、お悩みのかたは当事務所へご相談ください。