交通事故で骨折した場合の後遺障害認定について|症状別の等級も解説
交通事故で骨折をしてしまった場合、加害者や保険会社に対して損害の補償を請求することになります。もし交通事故による骨折が原因で、体の一部に後遺障害が残ってしまった場合、高額の後遺障害慰謝料が認められる可能性があります。
骨折によりどのような後遺障害が発生する可能性があるのか、症状ごとの慰謝料はどのくらいの金額になるのかなどについて、詳しく見ていきましょう。
骨折を原因とする後遺障害は6種類|各症状の後遺障害等級は?
骨折が原因で発生する後遺障害は大きく6種類に分類されます。
また、それぞれの後遺障害の内容や重さによって「後遺障害等級」が定められており、等級に応じて後遺障害慰謝料の金額が変わってきます。
各後遺障害の内容と、対応する後遺障害等級について具体的に見ていきましょう。
神経障害の後遺障害等級
神経障害は、骨折箇所に痛みやしびれが残る後遺障害です。
後遺障害の中では比較的軽い部類になります。
神経障害の内容 | 後遺障害等級 |
---|---|
局部に頑固な神経症状を残すもの | 12級 |
局部に神経症状を残すもの | 14級 |
機能障害の後遺障害等級
機能障害は、手足や指の機能が失われてしまったり、可動域の一部が制限されてしまったりする後遺障害です。
機能障害の内容 | 後遺障害等級 |
---|---|
両上肢の用の全廃 両下肢の用の全廃 |
1級 |
両手の手指の全部の用廃 | 4級 |
一上肢の用の全廃 一下肢の用の全廃 |
5級 |
一上肢の3大関節中の2関節の用廃 一下肢の3大関節中の2関節の用廃 |
6級 |
一手の5の手指又はおや指を含む4の手指の用廃 両足の足指の全部の用廃 |
7級 |
一手のおや指を含む3の手指の用廃 おや指以外の4の手指の用廃 一上肢の3大関節中の1関節の用廃 一下肢の3大関節中の1関節の用廃 |
8級 |
一手のおや指を含む2の手指の用廃 おや指以外の3の手指の用廃 一足の足指の全部の用廃 |
9級 |
一手のおや指又はおや指以外の2の手指の用廃 一上肢の3大関節中の1関節の機能の著しい障害 一下肢の3大関節中の1関節の機能の著しい障害 |
10級 |
一足の第1の足指を含む2以上の足指の用廃 | 11級 |
一上肢の3大関節中の1関節の機能障害 一下肢の3大関節中の1関節の機能障害 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用廃 一足の第1の足指又は他の4の足指の用廃 |
12級 |
一手のこ指の用廃 一足の第2の足指の用廃 第2の足指を含む2の足指の用廃 第3の足指以下の3の足指の用廃 |
13級 |
一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの 一足の第3の足指以下の1又は2の足指の用廃 |
14級 |
参照:国土交通省「後遺障害等級表 後遺障害の等級及び限度額」
運動障害の後遺障害等級
運動障害は、脊柱(背骨)まわりが動きにくくなってしまう後遺障害です。
背骨やその周辺を骨折した場合などに発生する可能性があります。
運動障害の内容 | 後遺障害等級 |
---|---|
脊柱の著しい運動障害 | 6級 |
脊柱の運動障害 | 8級 |
参照:国土交通省「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準」
変形障害の後遺障害等級
変形障害は、脊柱(背骨)や長管骨の変形、手足の偽関節や運動障害が発生する後遺障害です。
部分的な骨折の程度がひどい場合、骨折が治癒しきれずに発生することがあります。
変形障害の内容 | 後遺障害等級 |
---|---|
脊柱の著しい変形 | 6級 |
一上肢の偽関節+著しい運動障害 一下肢の偽関節+著しい運動障害 |
7級 |
一上肢の偽関節 一下肢の偽関節 |
8級 |
脊柱の変形 | 11級 |
長管骨の変形 | 12級 |
参照:国土交通省「整形外科の障害認定に関する専門検討会報告書の概要について」
短縮障害の後遺障害等級
短縮障害は、一方の足が短くなってしまう後遺障害です。
大腿骨(だいたいこつ)などを骨折した場合、骨の再生が不十分となって発生することがあります。
短縮障害の内容 | 後遺障害等級 |
---|---|
一下肢を5センチメートル以上短縮したもの | 8級 |
一下肢を3センチメートル以上短縮したもの | 10級 |
一下肢を1センチメートル以上短縮したもの | 13級 |
参照:国土交通省「後遺障害等級表 後遺障害の等級及び限度額」
欠損障害の後遺障害等級
欠損障害は、手足や指の全部または一部を失ってしまう後遺障害です。
骨折の程度がひどく、後に手術などで負傷部位の切断を余儀なくされた場合などに発生します。
欠損障害の内容 | 後遺障害等級 |
---|---|
両上肢のひじ関節以上を喪失 両下肢のひざ関節以上を喪失 |
1級 |
両上肢の手関節以上を喪失 両下肢の足関節以上を喪失 |
2級 |
両手の手指の全部を喪失 | 3級 |
一上肢のひじ関節以上を喪失 一下肢のひざ関節以上を喪失 両足のリスフラン関節以上を喪失 |
4級 |
一上肢の手関節以上を喪失 一下肢の足関節以上を喪失 両足の足指の全部を喪失 |
5級 |
一手の5の手指又はおや指を含む4の手指を喪失 | 6級 |
一手のおや指を含む3の手指を喪失 おや指以外の4の手指を喪失 一足のリスフラン関節以上を喪失 |
7級 |
一手のおや指を含む2の手指を喪失 おや指以外の3の手指を喪失 一足の足指の全部を喪失 |
8級 |
一手のおや指又はおや指以外の2の手指を喪失 一足の第1の足指を含む2以上の足指を喪失 |
9級 |
一足の第1の足指又は他の4の足指を喪失 | 10級 |
一手のひとさし指、なか指又はくすり指を喪失 | 11級 |
一手のこ指を喪失 一足の第2の足指を喪失 第2の足指を含む2の足指を喪失 第3の足指以下の3の足指を喪失 |
12級 |
一手のおや指の指骨の一部を喪失 一足の第3の足指以下の1又は2の足指を喪失 |
13級 |
一手のおや指以外の手指の指骨の一部を喪失 | 14級 |
参照:国土交通省「後遺障害等級表 後遺障害の等級及び限度額」
交通事故による骨折の後遺障害等級ごとの慰謝料の金額相場
後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級ごとに相場が決まっています。
後遺障害慰謝料の算出基準には、以下の3つがあります。
①自賠責基準
自賠責保険から支払われる保険金の金額です。
②任意保険基準
加害者が加入している任意保険会社が最初に提示してくる慰謝料金額です。
非公表ですが、弁護士基準の金額の2分の1から3分の1程度になります。
③弁護士基準
裁判になった際に認められる可能性が高い慰謝料金額です。
自賠責基準(※)と弁護士基準に基づき算出される慰謝料金額は、以下のとおりです。
※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した後遺障害による損害の保険金等の支払いについては、新基準が適用されます。
令和2年4月1日以前に発生した後遺障害による損害の保険金等の支払いについては括弧内の金額です。
なお、第3級までは被扶養者がいる場合は更に増額します。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級 | 1150 (1100)万円 | 2800万円 |
2級 | 998(958)万円 | 2370万円 |
3級 | 861(829)万円 | 1990万円 |
4級 | 737(712)万円 | 1670万円 |
5級 | 618(599)万円 | 1400万円 |
6級 | 512(498)万円 | 1180万円 |
7級 | 419(409)万円 | 1000万円 |
8級 | 331(324)万円 | 830万円 |
9級 | 249(245)万円 | 690万円 |
10級 | 190(187)万円 | 550万円 |
11級 | 136(135)万円 | 420万円 |
12級 | 94(93)万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
参照:日弁連交通事故相談センター東京支部「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(2020年版)」
骨折の後遺障害慰謝料を適正に受け取る2つのポイント
骨折による後遺障害の慰謝料請求を速やかかつ適正に行うためには、以下の2つの点に留意しましょう。
①被害者請求で手続きを行う
後遺障害等級認定の申請は、自賠責保険会社に対して行うことになります。
申請の方法は、加害者の加入する任意保険会社に任せる「事前認定」と、被害者が自ら手続きを行う「被害者請求」の2つがありますが、以下の理由から被害者請求の方法で申請することをおすすめします。
- 自分で速やかに申請書類を準備することにより、手続きを早く進められる
- 後から被害者に有利な書類を追完できる
骨折した際に、適正な後遺障害慰謝料を受け取りたいのであれば、被害者に有利な書類を準備できる「被害者請求」で手続きすることをおすすめします。
②弁護士へ依頼をする
適正な後遺障害慰謝料を請求したいのであれば、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士が加害者や任意保険会社と示談交渉を行う場合、後遺障害慰謝料の3つの算定基準のうち、被害者にもっとも有利な弁護士基準で請求するケースが多いです。
また、弁護士は示談交渉や書類の準備など、すべて代行してくれますので、後遺障害慰謝料請求の手続きをスムーズに行えます。
まとめ
交通事故の後遺障害慰謝料を正しく請求するには、適正な後遺障害等級の認定を受けた上で、弁護士の協力の下で示談交渉を行うことがポイントになります。
適正な後遺障害慰謝料を受け取りたい方は、ぜひ弁護士へご相談ください。